ロストワールド
6時半にご主人に送ってもらい、ワイトモへのツアーバス集合場所へ。
ツアー会社の窓口には、明らかに男の人が女装しましたという風貌の女性が。髪の毛を伸ばし、きれいに化粧して胸パットも入れ、ミニスカートをはいているが、見た目も声も男だった。
日本では、今でも特別な才能がないかぎり、なかなか夜の店以外では働くことはできないだろう。
朝からものすごく驚いたが、そのようなそぶりは見せず、彼女の説明を聞く。しかし、どうにも腕のむだ毛がうずまいていることとか他のことに気をとられ、話半分である。
そして、7時に小型バスで出発。
今日も雨である。
途中の休憩で同じバス会社の運転手のおじいさんが挨拶をしてくれた。今回は前回で学んだので、休憩場所で温かい紅茶とマフィンで腹ごしらえする。
私が選んだツアーには同じバスの人は誰も参加しないらしい。前回と同じパターンである。自分でカウンターでチェックインし、座って待っていると、ツアーガイドらしき女性が現れた。
今回はワイトモの原生林がある所に100メートル下までロープで下って、その後洞窟を探検しようという「ロストワールド」というツアーだった。
「世界不思議発見」で観てから、やりたかったことのひとつである。洞窟をタイヤにのって進むブラックウォーターラフティングもやりたかったが、時間がないので、ひとつしかできない。
参加者はオランダ人の新婚さんとイギリス人男性だった。
面倒なので、「英語の勉強に来た」ことにした。
オランダ人夫婦は母国語のように英語を話す。4人で盛り上がってうらやましい。
なんとか言っていることはわかるが、会話に入っていけない。私に向かっての質問は答えられるが、4人の会話は流れていくので話に加わると中断させてしまう。
着替えをする場所に到着し、つなぎと長靴とヘルメットを装着する。
長靴の一番小さいのでも大きい。
「これが一番小さいサイズ?」と女性ガイドに聞くと、「それが一番小さいよ。あなたは本当に小さいのね。でも、それでぬげないと思うわ」と。
他の人たちが大きいのだと思うんですけど。オランダ人夫婦は軽く170センチは超しているし、イギリス人男性は、180センチはあるだろう。
準備できると、カラビナの使い方を教わりながら歩いていく。そして、ついに100メートル下にロープで下りるときがきた。
オランダ人妻からである。彼女はとてもおびえていた。「大丈夫」とガイドと夫に励まされ、どうにか定位置に。
ついで、夫。こちらはなんなく定位置に。
そして、私。なぜかいつもこういうのは全然怖くない。「あなた、届く?」と心配されたがちゃんと届いた。
最後にイギリス人男性。彼もとてもおびえていた。「昨日、スカイタワーからバンジージャンプしたんだよ!」と自慢していたというのに。
進み方と泊まり方の説明を聞いて、いざ下へ。足も使って進んでいると、ガイドが「あんたは軽いから足は使わなくて良いよ」と言うので手だけで。
5人で一緒に進むから早く進みすぎないように、と最初に説明を受けていたが、怖がっている妻とイギリス人男性と妻を気遣う夫にあわせているつもりが、がんがん進んでいて、「速すぎるわ」とガイドに注意された。
そして5人同時に着地。
エキサイティング!と騒ぐ3人の参加者。しかし、私は「こんなもんなの?」という感想だった。ガイドはそれがわかったらしく、「物足らなかったの?」と聞くので、「いいえ、とても楽しかったです」と答えた。
しかし、下からの風景は絶景である。本当にロストワールドだ。恐竜がいてもおかしくない。映画みたいな風景。
それから、ヘルメットのライトをつけて、洞窟探検。
そこも妻、夫、私、イギリス人男性の順番である。
妻は足場の悪い洞窟内でかなり困っていた。そのたびにガイドと夫が手をひいたりしながら進んでいる。
私はガイドが言うように小柄だからか特に何の問題もない。みんなが横にならないと進めない岩場も前に向いたまま進めるので楽ちんなのだ。
途中、夫が妻の様子を見ていて、「ここは足場が特に悪い」と思われる場所に立ち止まって手を引いてくれようとしたが私が気づかずに自分でどしどし歩くので、途中から気遣われなくなった。
もしや、これが結婚している女としていない女の違いではないか?と。
妻は私から見ても、守ってあげなくては!と思わせるかわいさがある。たとえ、身長が20センチ以上大きくても。
しかし、せっかくちょっと危険で楽しそうなところなのに、手をさしのべられても「いいえ、結構!」とさしのべられた手を振り払いたくなるのである。(実際にはしてないけど)
人生においてもそういうところがままあるのではないか?と。
しかし、自分が楽しいと思っているほうを選んでいるのだからしょうがない。結婚したいと思っている女性は妻を見習ったほうがいいなあと納得していた。
すると、ガイドが「あなたはここに来る前はもっと英語が下手だったの?こっちに来てから上手くなったの?」と痛いところをついてきた。
「いいえ、私の英語は変わりなしです」
「英語の初心者なのね!」
いいえ、中学生の時からなのでほぼ20年勉強していますが、この程度なのです。
と心の中で回答した。
もし、口に出して答えたらものすごい驚かれるに違いないので。
最後に、真っ暗な洞窟の狭い岩場を進んでいった。ヘルメットのライトを消すと、ツチボタルが洞窟の天井で青い光を放っていた。
写真でみたのと同じ。本当に星空を眺めているようである。
このツアーではツチボタルを見ることはないだろうと思っていたので、一番感動した。ライトをつけてよく見ると、気持ち悪い虫なのに、ライトを消すとこんなにも美しい光を放っているとは。
後ろ髪を引かれながら、洞窟を後にした。
ガイドに何度も「あなたは本当に小さいのね」とか「彼女は特別に小さいから」とか言われたが、このツアーは大柄な人しか参加してないのだろうか?パンフレットには、10歳以上から参加可能と書いてあるが。私は日本人の中でも小柄な方だが、特別に小さいほうでもない。謎である。
「あなたはずっとこの仕事を続けるの?」と妻がガイドに聞いていた。
「わからないわ。私は川の流れと同じで同じ場所に長くいられないの」と笑っていた彼女は私の次に小柄であるが、2リットルのジュースと5人分のお菓子、その他いろいろが入った大きなバッグを背負って自分よりも大きな男性を支え続けていた。
「彼女は本当にタフだわ!」妻の言葉に全員賛同した。
14歳の時にガンズアンドローゼズのライブに初めて行ったという彼女。ということは私とほぼ同じ年である。
イルカと泳ぐツアーのガイドも全員女性であった。
ニュージーランドは女性がタフで元気な国である。
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