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2007年12月

出発の前の日

雨の音で目が覚める。

ものすごい大雨である。

研修初日と同じ。

スカイタワーには行けそうもない。

初めて、朝のニュースを自室のテレビで見る。

研修していたときは、一日中英語だったから聞きたくなかったが、もう今日で最後となるとどうして今まで観なかったのかと後悔。

こちらの女性キャスターはニュースを読むのに、派手な大きな花柄のドレスなど着ている。前にリビングで観たときは真っ赤なドレスを着ていた。

10時前にバス停へ。いつもの坂道もいとおしい。

バスに乗り、オフィスへ。

中国系女子とぽっちゃりさんとおじいが出迎えてくれた。

「あなたがいなくなってから、みんなで寂しい寂しいって言ってたのよ」と言ってくれた。

それから、ぽっちゃりさんがこっそりみんなを呼びに行ってくれて、ざわざわと何人もの人が来てくれた。

ケーキおばあも、もちろんやってきてくれてハグしてくれた。

土曜日から昨日までの5日間の出来事を手短に話すと、みんな楽しそうに笑っている。

それから「また連絡してね」と笑顔で握手などしたりして、ばらばらと仕事に帰っていった。

「それで、ここでもう少しいたいの?」とぽっちゃりさんが聞いてくるので、「いたいというより、もう住みたいですなあ」と答えた。

「でも、私の英語は相当ひどいとツアーの運転手さんにもガイドさんにも言われたので難しいでしょうなあ」

「あなたの英語は決して悪くないわ!」

ぽっちゃりさんはそう言い放つと、おじいを呼んだ。

「この子の英語力をどう思う?」

「立派なもんだと思うよ。聞けるし読めるし。ただ、君はあまりしゃべらないから知らない人には理解できなくてしゃべれないと思われるんだよ」

「そうよそうよ。留学生の中にはもっとひどい子もたくさんいるわ!」

二人とも私のために熱く語ってくれた。いい人達である。

「君は、ここでいろんな人に出会い、コネができたから、ここで住むことは難しくはないよ!」と微笑むおじい。

「これが私の自宅の住所とメールアドレスよ。何かあったら必ず連絡しなさい」というぽっちゃりさん。そして、なぜか会ったことのないご主人とまだ赤子の天使の名前も書かれていた。

「あなたがいなくなってから、私は仕事がつまらなかったのよ」などと言ってくれる中国系女子。

ここは本当に居心地の良い場所だった。

名残惜しいが、忙しくなってきたので帰ることにした。

中国系女子と笑顔でハグ。ぽっちゃりさんとハグすると、またぽっちゃりさんが涙目に。泣きそうになったがぐっとこらえて、さよならした。

オフィスから出ると、やっぱり涙が出てきた。

ケーキおばあのおすすめのアートギャラリーに行ってみたが、絵を見ながら涙が出た。周りの人からは感動して泣いているように見えただろうか?

ニュージーランド、あっぱれである。素晴らしい人たちがいる素晴らしい国である。

今回も参りました。

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ロストワールド

6時半にご主人に送ってもらい、ワイトモへのツアーバス集合場所へ。

ツアー会社の窓口には、明らかに男の人が女装しましたという風貌の女性が。髪の毛を伸ばし、きれいに化粧して胸パットも入れ、ミニスカートをはいているが、見た目も声も男だった。

日本では、今でも特別な才能がないかぎり、なかなか夜の店以外では働くことはできないだろう。

朝からものすごく驚いたが、そのようなそぶりは見せず、彼女の説明を聞く。しかし、どうにも腕のむだ毛がうずまいていることとか他のことに気をとられ、話半分である。

そして、7時に小型バスで出発。

今日も雨である。

途中の休憩で同じバス会社の運転手のおじいさんが挨拶をしてくれた。今回は前回で学んだので、休憩場所で温かい紅茶とマフィンで腹ごしらえする。

私が選んだツアーには同じバスの人は誰も参加しないらしい。前回と同じパターンである。自分でカウンターでチェックインし、座って待っていると、ツアーガイドらしき女性が現れた。

今回はワイトモの原生林がある所に100メートル下までロープで下って、その後洞窟を探検しようという「ロストワールド」というツアーだった。

「世界不思議発見」で観てから、やりたかったことのひとつである。洞窟をタイヤにのって進むブラックウォーターラフティングもやりたかったが、時間がないので、ひとつしかできない。

参加者はオランダ人の新婚さんとイギリス人男性だった。

面倒なので、「英語の勉強に来た」ことにした。

オランダ人夫婦は母国語のように英語を話す。4人で盛り上がってうらやましい。

なんとか言っていることはわかるが、会話に入っていけない。私に向かっての質問は答えられるが、4人の会話は流れていくので話に加わると中断させてしまう。

着替えをする場所に到着し、つなぎと長靴とヘルメットを装着する。

長靴の一番小さいのでも大きい。

「これが一番小さいサイズ?」と女性ガイドに聞くと、「それが一番小さいよ。あなたは本当に小さいのね。でも、それでぬげないと思うわ」と。

他の人たちが大きいのだと思うんですけど。オランダ人夫婦は軽く170センチは超しているし、イギリス人男性は、180センチはあるだろう。

準備できると、カラビナの使い方を教わりながら歩いていく。そして、ついに100メートル下にロープで下りるときがきた。

オランダ人妻からである。彼女はとてもおびえていた。「大丈夫」とガイドと夫に励まされ、どうにか定位置に。

ついで、夫。こちらはなんなく定位置に。

そして、私。なぜかいつもこういうのは全然怖くない。「あなた、届く?」と心配されたがちゃんと届いた。

最後にイギリス人男性。彼もとてもおびえていた。「昨日、スカイタワーからバンジージャンプしたんだよ!」と自慢していたというのに。

進み方と泊まり方の説明を聞いて、いざ下へ。足も使って進んでいると、ガイドが「あんたは軽いから足は使わなくて良いよ」と言うので手だけで。

5人で一緒に進むから早く進みすぎないように、と最初に説明を受けていたが、怖がっている妻とイギリス人男性と妻を気遣う夫にあわせているつもりが、がんがん進んでいて、「速すぎるわ」とガイドに注意された。

そして5人同時に着地。

エキサイティング!と騒ぐ3人の参加者。しかし、私は「こんなもんなの?」という感想だった。ガイドはそれがわかったらしく、「物足らなかったの?」と聞くので、「いいえ、とても楽しかったです」と答えた。

しかし、下からの風景は絶景である。本当にロストワールドだ。恐竜がいてもおかしくない。映画みたいな風景。

それから、ヘルメットのライトをつけて、洞窟探検。

そこも妻、夫、私、イギリス人男性の順番である。

妻は足場の悪い洞窟内でかなり困っていた。そのたびにガイドと夫が手をひいたりしながら進んでいる。

私はガイドが言うように小柄だからか特に何の問題もない。みんなが横にならないと進めない岩場も前に向いたまま進めるので楽ちんなのだ。

途中、夫が妻の様子を見ていて、「ここは足場が特に悪い」と思われる場所に立ち止まって手を引いてくれようとしたが私が気づかずに自分でどしどし歩くので、途中から気遣われなくなった。

もしや、これが結婚している女としていない女の違いではないか?と。

妻は私から見ても、守ってあげなくては!と思わせるかわいさがある。たとえ、身長が20センチ以上大きくても。

しかし、せっかくちょっと危険で楽しそうなところなのに、手をさしのべられても「いいえ、結構!」とさしのべられた手を振り払いたくなるのである。(実際にはしてないけど)

人生においてもそういうところがままあるのではないか?と。

しかし、自分が楽しいと思っているほうを選んでいるのだからしょうがない。結婚したいと思っている女性は妻を見習ったほうがいいなあと納得していた。

すると、ガイドが「あなたはここに来る前はもっと英語が下手だったの?こっちに来てから上手くなったの?」と痛いところをついてきた。

「いいえ、私の英語は変わりなしです」

「英語の初心者なのね!」

いいえ、中学生の時からなのでほぼ20年勉強していますが、この程度なのです。

と心の中で回答した。

もし、口に出して答えたらものすごい驚かれるに違いないので。

最後に、真っ暗な洞窟の狭い岩場を進んでいった。ヘルメットのライトを消すと、ツチボタルが洞窟の天井で青い光を放っていた。

写真でみたのと同じ。本当に星空を眺めているようである。

このツアーではツチボタルを見ることはないだろうと思っていたので、一番感動した。ライトをつけてよく見ると、気持ち悪い虫なのに、ライトを消すとこんなにも美しい光を放っているとは。

後ろ髪を引かれながら、洞窟を後にした。

ガイドに何度も「あなたは本当に小さいのね」とか「彼女は特別に小さいから」とか言われたが、このツアーは大柄な人しか参加してないのだろうか?パンフレットには、10歳以上から参加可能と書いてあるが。私は日本人の中でも小柄な方だが、特別に小さいほうでもない。謎である。

「あなたはずっとこの仕事を続けるの?」と妻がガイドに聞いていた。

「わからないわ。私は川の流れと同じで同じ場所に長くいられないの」と笑っていた彼女は私の次に小柄であるが、2リットルのジュースと5人分のお菓子、その他いろいろが入った大きなバッグを背負って自分よりも大きな男性を支え続けていた。

「彼女は本当にタフだわ!」妻の言葉に全員賛同した。

14歳の時にガンズアンドローゼズのライブに初めて行ったという彼女。ということは私とほぼ同じ年である。

イルカと泳ぐツアーのガイドも全員女性であった。

ニュージーランドは女性がタフで元気な国である。

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変化

1泊2日で、10数年前にホームステイしていたホストマザーに会いにクライストチャーチへ。

彼女は明らかに年をとっていた。お互い様ですが。

まず、運転が元々下手だったが、さらに下手になっていた。車に乗るのが怖かった。

駐車券を入れる場所がわからず、お札を入れる所に無理矢理入れようとするから、「ここだ!」と教えた。

人の話を聞かない傾向があったが、さらに聞かなくなっていた。エンドレスに自分の話を話すが、どんどん話題が変わるので途中から何の話をしているのやらさっぱりわからなくなった。

昔はこの人に頼っていたなあと思った。光陰矢のごとしである。

新しいパートナーに会ったが、結婚しているわけではなく半同棲?らしい。

最初の結婚相手の印象が強いので、(しかもとてもいい人だった)どうにも会話も続かない。

そして、ホストマザーと私の二人だけになると、最初の結婚相手の人の話がでてしまい、途中から参加したニューパートナーは、無言になり、気まずい。

そして、何より町が変わっていた。当時のあのこじんまりとした雰囲気が好きだった私には寂しい変化だった。

ショッピングモールが当たらしく3つもできていて、今はそこがトレンドだとホストマザーは言うが、モールにある店は、オークランドでも見たことがある店でどうやらチェーン店らしくて私には特に買いたい物はなかった。

ただひとつ変わっていない物は私の語学力だけだった。

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クリスマスの準備

今日は、私がたまたま買ったクリスマスの教会のコーラスCDが滞在先の近くであったことが判明したため、ご主人にその教会へ連れて行ってもらった。

車に乗る前に、「倉庫の階段のところに貝殻を並べているのはなぜか?」といつも疑問に思っていたことをたずねると、「ここに置くと、毎朝出かけるときに海に行ったことを思い出すことができるだろ?」と嬉しそうだった。

驚いたことに歩いても10分ほどでいける距離である。

今日は日曜なので信者がたくさん来ていてセレモニーがあるとのことなので、それが終わった頃に行ってみた。

本当にみんな正装している。というか、盛装?

子供も大人もドレス着てるし。

「赤毛のアン」の教会用の服っていうのを思い出した。

外観は煉瓦造りの古くて立派な建物。ご主人の説明によると、教会のすぐ裏に教会が運営している小学校があるという。

小学校は木造で、暖かい感じだった。「とてもいい学校だよ」

それから、教会の中へ。

欧米の教会の造りは、まあどれも似た感じである。

そこに大きな透明の器に水が入っているのを発見した。

「あれは何?」

「あれは、赤ちゃんが洗礼を受けるときに使う水だよ」

小説とかで読んだことがあるが、実物を見たのは初めてだ。そばでじろじろ見まくっていると、神父さんが「こんにちは」とやってきた。

神父さんは大体おじいさんである。ちょっと若い神父さんは雰囲気ではないし、実際あまり見ないのはなぜか?

「この子は日本から私の所に滞在していて、この教会に興味があるとのことなのでつれてきました」

「教会はいつでも誰でも受け入れていますよ」

神父さんに挨拶し、握手をした。そして、神父さんの歯のほとんどが虫歯であることを発見した。

教会の外に出ると、隣の大きな白い建物が神父さんの家だとご主人から聞いた。金持ちなのに、歯医者に行ったらいいのに。。。

それから、奥様が働き始めたフレンチのお店に。今日は10周年記念ということで、なにやらのサービスがあるらしい。

立地場所は工場?という雰囲気の殺風景な所であったが、お店のなかはフランスの田舎っぽくてなかなかおしゃれである。

店の経営者らしきおじさんが、ご主人を見つけ無料のシャンパン?をふるまっている。奥様が働いているブティックに行って声をかけると、カフェの方に連れて行ってくれ、紅茶をごちそうになった。

カフェも街のカフェと違い落ち着いた雰囲気である。音楽もクラシックが流れ、老夫婦が食事をしている。

お兄さんも男前である。

お茶を飲んだ後、店のなかをぐるっと一周。フランスのワインやお菓子を輸入して販売しているらしい。

気になっていた雑貨コーナーでクリスマスの飾りようの鳥を買った。こちらの飾りはラメラメで派手派手である。最初見たときは、どうだろうか?と思ったが見慣れるとかわいく思える。もうすぐ日本に帰ることだし、記念に買うことにした。

それから、丸い缶に入ったCDを購入。何を買うにも選ぶのに時間がかかる私は、CDを選んでいる間に奥様に見つかり、「まだいたの?」と声をかけられた。

それから、一路スカイタワーへ。

どのガイドブックにもオークランドの見所のトップに書かれていて、大学からもいつもその姿を眺めていたが行く機会がなかったのである。是非とも行かねば。

しかし、天気予報は晴れだったのに、朝までは晴れていたのになぜか雨。

今日タワーに昇っても何も見えそうにない。

ダウンタウンで今一番はやっているとガイドブックに載っていた通りに行ってみる。

なるほど。一番大きな通りは、いまいちな土産物屋や大きなデパートぐらいしかないが、ここは小さいがおしゃれな店が多い。

そこでいろいろ見て回り、大学に行っていたときに中国系女子に連れて行ってもらったフードコートへ。

そのときは、前に大学で働いていたけど今はアニメーションスクールの事務をやっているという香港人の女の子と一緒に初めてのマレーシア料理を食べた。

そのときも帰りに雨が降り出して、香港人の女の子に傘を借りることになったが、時間がなくなったので、走って戻ったのだった。

彼女の「アイハブマイアンブレラ」というかわいい声を思い出した。彼女は身長が140センチぐらいでちょっとぽっちゃりした色白のショートカットの赤ちゃんみたいな容貌の女の子だった。

そのときは平日だったから混み合っていたが、今日は人もまばらである。

それから、ガイドブックに載っていたビクトリアマーケットというところに行ってみるが、なんですか、ここは?というぐらいにさびれた店しかなかった。

昨日、購入した羊のスノードームもここでは3ドルも高い。ぼったくりだ。

見る物もないので、バスに乗り、滞在先へ。

ご主人の屋根のペンキ塗りも朝のままである。

帰るとちょうど、クリスマスツリー用のもみの木を設置しているところだった。本物の170センチ以上あるもみの木はいいにおいがする。

奥様が、「今年の飾り付けはあなたにまかせるわ」というので、プレッシャーを感じながら飾り付け。

先週、ぽっちゃりさんと一緒に行ったチョコレートの店で、クリスマスツリーの飾りようのサンタのチョコも飾ってみる。

ご主人は、「素晴らしいよ。趣味が良いね」と誉めてくれるが、ちょっと怪しい。

なぜなら、余ったゴールドの丸い飾りをデッキにある白いパラソルにホッチキスでとめはじめたから。しかも3個だけ。

「すごくいいだろ?」と言うので、どうだろうか?と内心思ったが「グッド」と答えておいた。

奥様がウォーキングから戻ってきて、ツリーを誉めてくれたので、「ご主人も飾ってます」とパラソルを指すと、吹き出していた。「ちんどんやみたい」と。

階段の上の貝殻といい、ご主人の趣味は時々わからない。でも、とてもかわいらしい。

夕食後、ライトをつけてみると、飼っている黒猫がツリーの下に座り、とても雰囲気がでた。

パラソルのゴールドの玉も窓の外で照らされていた。

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ひひっ

今日は、ベイオブアイランズにイルカと一緒に泳ごうツアーに行く日。

仕事ではないせいか、朝5時に目が覚めると、庭で鳥の鳴き声がすごい。鳴き声というか、騒いでるような。

ご主人に集合場所まで送ってもらうことになっていたので、7時前に朝食。ご主人が作ってくれていた。本当にまめな人である。

「今日は鳥の鳴き声で目が覚めたよ」と言っていた。

こんな都会で、鳥の鳴き声で目が覚めるなんて。

それから、朝食を食べて準備をしていると、「用意した?」とご主人の声。

あわてて、出発。

集合場所にはもうバスが。

バスに乗ろうとすると、運転手のおじさんが、「オフィスで手続きしてからだよ」と。

レシートみたいのをもらい、バッジの代わりに胸に黄色のシールを貼れとのこと。それを貼ってバスに乗ると、見事にアジア人は私だけだった。欧米人複数とインド系2人。

運転手のおじさんは、出欠をとるときに、「あなたはどこから来たの?」とひとりひとりに聞いていく。

それから、おじさんは、「今日はツアーに参加してくれてありがとう。いろんな国から来てくれているよ。まず、スペインから○人、スイスからカップルが、インドからレディが2人、ジンバブエからレディが1人、オーストラリアから○人、そして、日本からヤングガールが1人、みんな楽しんでいってください」

おじさん、私はもうヤングガールではありません。なぜ私だけレディではないの?

若く見られるのは嬉しいが、素直に喜べる時とそうでない時がある。最近は、そうでない時が圧倒的に多い。

まず、小柄だからというのは仕方ない。アジア人は若く見えるのも仕方ない。問題はそれ以後のことである。これは推測であるが、「ノーメイクである。(最近、化粧することも面倒だ)服装や持ち物が安物である。(スリ、置き引きにねらわれないように自意識過剰の注意を払っている)アホっぽい。(英語が不自由なため、よく子供扱いをされる)・・・」などの理由で若く見られると思われる。

バスが走り出すと、運転手のおじさんの自己紹介がはじまった。「私はマオリ人だよ。これからハーバーブリッジを渡って北へ向かうよ!・・・」あとは時々聞き取れたが、大部分わからなかった。そしていつものように無意識のうちに眠っていた。

「さあ、モーニングティーの場所にもうすぐ着くよ。30分だけしか止まらないからね」という声で目が覚めた。

バスの発車時刻だけには敏感になる。置いてけぼりは恐ろしい。

ついたとたん、トイレへ。

で、みなさんはコーヒーや紅茶と一緒に甘ったるいマフィンやケーキなどを朝から食べているが、水は持参しているし、朝食はしっかり食べたので、絞り立てのオレンジジュースと昼ご飯用のバナナを頼んだ。

マオリの男の子が、「ジュースを作るからちょっと待ってて。こっちだよ!」と言う。入り口にあったパチンコ台みたいな機械がオレンジジュースを作る機械らしい。皮のまままるごと放り込んでいく少年。まるごとジュースか?とじっと見ていると、皮だけが半分にとれて、ジュースが絞れるしくみになっていた。

しかし、まるごと1個ずつ入れるので調整がきかない。私のコップのジュースが満タンになると彼は2杯目のコップを用意した。2杯くれるのか?

そんなに甘くはない。次にジュースを頼んだ人が私の残り?の続きを飲むのだ。

ジュースを飲んで店の土産物を見ていると、羊のスノードームが目にとまった。値段は5.4ドル。まあ、そんなもんだろう。ちっちゃいスノードームの中の子羊が愛らしい。しかし、これは、日本でいうドライブインにおかれている土産物っぽい。ちょっと安っぽいところとニュージーランドを強調しているところが。

買わずにバスに戻り、また睡眠。

気づくと目的地に着いていた。「なんとかの人はここで荷物を持っておりてください。・・・」またわからない。

とりあえず降りてみた。インド人の女の子が歩いている方向に行っていると、バスのおじさんに「あんたはダメ!」と引き留められ、旅行カウンターみたいなところに連れて行かれた。「イルカと泳ぐ船はあそこから出るからね。」

「帰りのバスの時間は何時ですか?」

「心配いらないよ。あんたが戻ってくるまで待ってるから。日本人が英語が苦手なことはわしはよくわかってるんだから!」と自慢げなおじさん。

出発までに時間があるので、カフェに入ってサンドイッチのみを購入。「飲み物もいらないの?」とびっくりするおばちゃん。「いりません」

水が鞄に入ってるし、朝買ったバナナもあるから。

こちらの人は何かといろいろ注文する。飲み物はもちろん、甘いデザートも絶対だ。

食べ終えると、水着に着替えるところがあるのか旅行カウンターのお姉さんに聞きに行った。「船の中にトイレがあるからそこで着替えて」

すると、二人の美女が運転する黄色い船が戻ってきた。どうやらこれっぽい。

乗り込むと全部で14名の客。全員欧米人。注意書きは日本語版があったので、日本語版にした。

それから、ジャクリーン・ケネディみたいな40代の女性と20代の金髪女性がそれぞれ説明してくれた。

船が出発すると、もうひとり助手っぽい若い女の子に「水着に着替えたい」というと「トイレに」と案内された。一つしかない。

みんなどうやって着替えるのだろうか?

水着の上に洋服を着て座っていると、イルカが。

船のそばで何頭ものイルカが泳いでいる。水族館みたいだと思った。

早く泳ぎたい。

しかし、周りにも同じようなツアーの船が何隻もあるため、ここでは泳がないようだ。

しばらくすると天気が悪くなった。雨が降り始め、寒くなった。持ってきていた洋服を全部着る。他の人たちは泳ぐのに備えてか、薄着(短パンに裸足でビーサン)であるため、隣の女性はふるえている。スカーフを取り出し、首にまいていた。

寒くなってきたので、操縦しているジャッキーを見習い(彼女は昼ご飯を食べながら、足で操縦していた)持っていたチョコを食べることに。もうひとりの金髪女性もリンゴを食べたりバナナを食べたりしながら、双眼鏡でイルカを探している。

また気づいたら眠っていた。

「残念ですが、今日はイルカとは泳げません。いつもこの辺りにいるのに、今日はいないんです」

ジャッキーと金髪女性がそう言うと、またもとの海路を帰りだした。

日本だと、「申し訳ございません」とか言って頭を下げ、すまなそうなそぶりを見せるだろうが、二人とも今日はいないんだからしょうがないでしょってな感じである。

おいおい、寒いし泳げないし何だよ!と心の中で思ったが、他の人たちは特に不満を言うでもなく笑顔である。

そのうちまた睡魔が。

一日中眠っている。遠くまで昼寝に来たとしか思えない。

到着すると金髪女性が笑顔で「サンキュー」と言った。その笑顔を見たら、イルカもあんなに近くで見れたし、良かった良かったという気分になった。

バスの運転手のおじさんが待っていた。

あんなにいろいろ食べたのに、まだお腹がすいている。

特に船のなかで前のおばさんが食べていたスナックが食べたい。

しかし、ここは日本でないからコンビニなどそうそうないのだ。周辺を見て回ったが、アイスクリーム屋さんしかなかった。

バスに乗ると、おじさんは朝と変わらずハイテンションであるが、客はノーリアクションである。

そして雨も激しくなってきた。

すると、急にバスが何かに乗り上げたように上下に動き、停車した。

「パンクしたみたいだ。ひひっ」とおじさん。

おじさんはいつも何か言ったあとにおかしいことでもないのに「ひひっ」と笑う癖があるようだが、このときほどその癖は直した方がと思ったことはない。非常事態に当事者に陽気にされたり、笑われたりすると腹が立ったりするものである。

ざわつく乗客達。

「他のバスがもうすぐここに到着するからそれまで音楽でも聴いて待ってて。ひひっ」おじさんの笑い声がまた悲しく響く。

しかも、音楽もクリスマスソングらしいが、弾んだリズムでこの場には全然あってない。陽気な音楽だけにさらにもの悲しくなる。

「バスが来たから、みんな乗り換えて。ひひっ」

どうやら、オークランドとベイオブアイランズとの長距離高速バスに乗せてもらえるらしい。

おじさんは一人で残り、修理の車を待つらしい。

雨も激しくなり、おじさんがかわいそうになってきた。他の乗客も同じように感じたのか、おじさんの背中をさすったり、声をかけたりしている。

私も「サンキュー」と声をかけると、「ひひっ」と笑ってくれた。

おじさんを残してバスは出発した。今度の運転手さんはごく普通である。

そしてまた眠っていた。

「休憩場所に着きます。15分間で戻ってきてください」

朝、バナナを買ったお店に着いた。

どうやらあのスノードームは私に買われる運命らしい。

朝と同じ状態で1つも売れることなく残っていた。こうして子羊は私のものとなった。

そして、見慣れたスカイタワーが見えてきた。オークランドだ。

なにやらいろいろあったが無事に帰れて何よりである。

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